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5秒前の午後-12

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相方と初めて会ってから半年が過ぎ、

同棲開始から1ヶ月が経った。

愚かな自分は何かを贈りたいと考えた。


本好きの相方にブックカバーなら

不自然でないだろうと思いつき、

友人に相談してメーカーを選定。


昨夜、仕事を早めに切り上げて

こっそり地図をプリントアウトし、

表参道に向かった。


初めて歩く街はいつも楽しい。


店は大通りに面さずひっそりと佇んでいた。

他に客が居らず入りづらいのをこらえ、

重いガラスの扉をゆっくりと引いた。


静かな店内。


買うものは決まっていたので真っ直ぐと

目的のものを見つけ、レジへ向かう。


と、また不必要な欲望が頭を擡げた。

お揃いとは言わない、何かを自分も持ちたいと。


結局帰りの紙袋の中には、黒のブックカバーと

ワインレッドの携帯ストラップが入っていた。


露骨にそれを身に付けるのは気が引け、

会社用の携帯につけることにした。

それでも常に机上にあって1日中目に入る。


想いを形にして残せば自分が苦しくなるのは

分かっているのに、繰り返してしまう。

馬鹿なんだ。


仕事で遅くなると言っていた相方は、

アルコールの匂いを漂わせて帰ってきた。


昨日もしたかったんだよ、と笑いながら

全身を撫でる手はとてもとても優しい。

普段より長く時間をかけた前戯は、

お互いを昂らせるのに十分すぎるほどだった。


熱かった。


「もう、他の男とするの、禁止」

「__は、俺、だけのもんだよ」


浅い呼吸の隙間から搾り出されてくる

途切れ途切れの言葉は、自分たちには

全く必要ないものでしかなかった。


誰かに抱かれ自分の輪郭を意識する度、

私は私の醜さに絶望し続ける。

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